格闘技徒然草

MMAを中心とした格闘技情報&観戦ブログ

★アキレス腱の夢

先日、SAMURAIで11/3修斗の中継を見た。お目当ては、メインの植松vs戸井田。もちろん結果はわかっていたわけだが、思った以上に一方的な展開だったことは意外だった。決まり手は、懐かしのアキレス腱固め(以下アキレス)。総合で「懐かしの」といわれる技はこれくらいだろう。それは、この技が「廃れてしまった技」だからである。
最初にアキレスがクローズアップされたのは、第1次UWFの頃。従来のプロレスのリングでは脚光を浴びることのなかった一見地味目な技が、フィニッシュホールドとして認知されたのがエポック・メーキングだった。他のプロレス技と違い、素人が見よう見まねでかけても極まらないのが不思議だった記憶がある。当時まだマイナーな格闘技「サンボ」の技であるというのも、その神秘性に一役買っていたと思う。
第1次Uの崩壊とともに、佐山はシューティング設立へと動き、総合の歴史が始まる。しかし、シューティング(修斗)の黎明期ですら、アキレスは「必殺技」の座を膝十字固めやヒールホールドに明け渡してしまっていた。形に入ってしまえば瞬時に極まるこれらの技に比べ、アキレスは極まるのに時間がかかるためだろう。
そして93年、UFCが誕生し、時代は「グラウンド顔面パンチ」へ。このルールにおいては、足関自体がポジションを悪くする、リスキーな技となってしまった。ヒールや膝十字ですらそうなのだから、極めるのに時間がかかるアキレスなどは論外である。当時、VTに挑むサンビストがインサイドガードからアキレスに行き、上を取られてボコボコに殴られるというシーンを何度も見た。彼らが身をもってアキレスの危険性(違った意味での)を主張したため、次第にアキレスは「使われない技」になっていってしまう。
現在、PRIDEヘビー級王者として「世界最強」の座に君臨しているヒョードルは、サンボの世界王者でもあるが、試合ではサンボらしい動きをあまり見せない選手だ。PRIDEでは一度もアキレスを狙っていない。ゴン格で、日本サンボ連盟の人が、「総合で勝つために研究した結果だ」と言っていた。たしかに、勝つために使えない技は淘汰されていくものだろう。しかし、それではちょっと寂しいではないか。
アキレスは、決して効かない技ではない。筆者は、某道場に出稽古に行った際、アキレスをかけられて悶絶したことがある。とてもではないが、耐えられる痛さではない。腕十字やアームロックとの最大の違いはこの痛さである。もちろん、他の技だって、タップせず我慢していれば、関節がはずれたり靱帯が伸びたりして、非常に痛いことになるのだろうが、幸いにしてその前にタップするのが当たり前になっている。ところが、アキレスの場合は、痛みに耐えられなくなったところでタップする。だから、アキレスは「最も痛い技」なのだ(もちろん、ただ痛いだけの技ではないので、我慢しすぎると松葉杖の世話になることになるが)。
サンボの五木田勝がかつて世界選手権に出場した時、アキレスの名人がいたそうだ。アキレス腱の型に入っただけで瞬時に極め、負けた選手は全員足を引きずっていたという。こういう選手が総合に参戦してきたら、アキレスは再び脚光を浴びることになるかもしれない。