格闘技徒然草

MMAを中心とした格闘技情報&観戦ブログ

★UFN75:UFC日本大会・予想と展望

メインイベント・ジョシュ・バーネット vs. ロイ・ネルソン

ヘビー級。ランキング8位ジョシュ vs. 11位ネルソン。
去年の日本大会でハントにKOされるまでは「KO勝ちか判定負けか」という試合をずっと続けてきたネルソン。しかし、代名詞ともいえる右オーバーハンドもさすがに警戒されてきて、最近5戦では1勝4敗。オッズもジョシュが優勢になっている。
ネルソンにはUFCではまだ見せていない寝技を見せてもらいたい。KO負けも少ないネルソンだが、キャリア31戦で一本負けはゼロ。メタモリスで護身の権化・ヒーロンをタップアウトしたジョシュが初のタップを奪えるかどうか。ネルソンはヘンゾから黒帯を授かり、グラップラーズクエストでフランク・ミアを下した寝技が健在かどうか、寝技勝負になれば見どころも多くなる。
しかし打撃勝負になればいつもの一発狙いのネルソンをジョシュが完封するだろう。パンチで弱らせてからならあっさり一本を取れる可能性もある。
ジョシュが一本勝ちと予想。

セミファイナル・ゲガール・ムサシ vs. ユライア・ホール

ミドル級。ムサシはランキング6位。ホールはランク外。
元はムサシ vs. ジュカオンだったが、37歳で引退直前のムニョスに勝っただけでランカーになったジュカオンの実力がいまいち信用できなかったので、こちらのカードの方が興味深い。
ホールはUFC4勝3敗。4勝のうち3つは1RTKO勝利で、唯一判定となったサントス戦は試合中に足を負傷し骨が露出するというアクシデントがあった。3敗はすべてスプリット判定負け。いずれも完敗というよりも、力を出し切れない展開での負けで、弱くは見えなかった。しかし勝った相手は引退間際のレーベンを除けば遥かに格下で、勝った試合にしても相手が弱すぎという印象しかない。
スタンドではバックスピンキック等の大技を繰り出すものの、TUF一回戦以降それでダウンを奪ったりはしていない。また、ややテイクダウンディフェンスにも難がある。
まだ隠された実力があるようにも見えるが、案外目に見えている実力がすべてかもしれない。過去最強の相手となるムサシ相手にどれだけできるかで本当の実力が測れる。
ムサシがパウンドからチョークで一本勝ちと予想。

第8試合・堀口恭司 vs. チコ・ケイムス

フライ級。ランキング7位堀口 vs. 13位ケイムス。
タイトル戦を除いて初めてのランカーとの対戦となる堀口。DJとのタイトル戦では序盤はテイクダウンを凌いでそれほど差がなかったが、時間がたつにつれてDJにテイクダウンを許し、打撃もヒットしていたが効果的ではなく最後は完敗だった。しかし相手がDJだったからこその展開であり、他の相手にどれだけできるかはまだ未知数の部分がある。
ケイムスはUFC戦績3勝3敗1NC。1敗は体重オーバーしたダスティン・キムラ戦で、1NCは判定勝ち後にマリファナが検出されたもの。フライ級転向後は1勝1敗。バンタム級時代にカン・ギョンホを破っている。フライ級初戦でブラッド・ピケットを破ってランクイン。前回はヘンリー・セフードと対戦し、オリンピックレスラーのセフードのタックルを切り続けて健闘したものの判定負け。
テイクダウンがそれほど強い相手ではないので堀口にとってはやりやすい。しかしケイムスも堀口を研究しているだろうし、テイクダウンを混ぜつつの打撃で来られると、打撃戦でも安心とは言えない。しかし地元で下位ランカーを相手にする以上、研究された上でもそれを上回って欲しいところ。
堀口判定勝ち。

第7試合・水垣偉弥 vs. ジョージ・ループ

バンタム級
元王者のクルーズに秒殺KO負けをし、次戦では年下のノーランカー・スターリングに一本負けしてタイトル戦線からは脱落した水垣。負ければリリースもありうる崖っぷちの状態で、地元で厄介な相手と組まれた。
バンタム級で185cmの長身・ループは、フェザー級時代にはジョン・チャンソンをKOしており、日沖のUFC初戦ではスプリット判定まで持ち込んでいる。規格外すぎるリーチと身長を持つ相手で、これまで同程度の身長の相手との対戦が多かった水垣にとってはやりにくさがあるはず。しかし前回はデビュー戦のロブ・フォントにまさかの1RKO負け。たまたまかもしれないが、最近打たれ弱くなっている印象がある。
水垣としてはループのリーチの中に入って至近距離での打撃勝負か。距離にさえ慣れれば水垣優勢と見る。水垣判定勝ち。

第6試合・菊野克紀 vs. ディエゴ・ブランダオン

フェザー級
ブランダオンはTUFウィナー。菊野にとってはファーガソン戦以来のTUFウィナーとの対戦。
菊野はライト級2戦目にファーガソンに完敗した後フェザー級転向。去年の日本大会でのフェザー級初戦ではサム・シシリアに一本勝ちしたが、ケヴィン・ソウザにはスタンドでプレッシャーをかけられ、前に出ようとしたところでカウンターをもらい一撃KO負け。
ブランダオンは柔術黒帯ながら、Sandstormで入場することからもわかる通り、スタンドではアグレッシブに撃ち合いをするスタイル。アグレッシブが災いし、序盤にスタミナを使い果たし、後半ガス欠することがよくある。
この試合が一番勝敗に興味がある。組みも打撃も強いブランダオン相手で厳しい戦いになると思うが、菊野のオリジナリティがあるスタイルがどこまで通用するか。

第5試合・廣田瑞人 vs. 石原夜叉坊

ROAD TO UFC JAPANフェザー級T決勝戦
RTUJ最年長の廣田と最年少の夜叉坊が決勝進出。両者ともすべて判定勝ちでの勝ち上がりだが、完勝だった廣田に対し、夜叉坊は安藤戦・ウィッキー戦ともに微妙な判定の末の勝利。負けていたという声があるだけでなく、内容的にも夜叉坊らしさが出ていない試合だった。ゴン格のインタビューによれば、今年の初めに東京に移り住むまでは遊び過ぎて格闘家の体ではなく、1,2回戦も本調子ではない上に勝ちに徹したためらしさが出なかったとのこと。
決勝進出が決まった後はアメリカに出稽古に行くなど充実しており、決勝では思い切りのいい試合を期待したい。
しかし、本来1階級上の廣田優位は動かないか。打撃のプレッシャーから距離を詰められて組みつかれるとフィジカル差が如実に出てしまい厳しい。夜叉坊は削られる前に勝負をかけたいところ。
廣田判定勝ち。

第4試合・中村K太郎 vs. リー・ジンリャン

ウェルター級。
本来ストラッサー vs. ジンリャンでメインカードでの対戦が予定されていたが、ストラッサーの負傷により、7月にDEEPウェルター級王座を獲得したK太郎が代役再契約。カードもプレリムに降格となった。
ライト級への転向時には、計量失敗・PXCでの敗退と良いところがなかったが、再びウェルターに戻すと4連勝。特にパンチが向上している。上手いだけでなく倒す打撃を身につけている。前戦の悠太戦も、最後は得意のチョークで決めたが、実質パンチで決まっていた。
ジンリャンは散打ベースで重い打撃が武器。柔術茶帯だが寝技ではK太郎の敵ではないだろう。打撃も、打たれながらも怯まず打ち返していくスタイルで、ディフェンス技術はあまり高くない。打撃で手詰まりにさせて、苦し紛れに組みついてきた相手からバックを奪い得意のチョークで仕留める展開を期待したい。唯一、パンチの一発の重さだけには気を付けたいところ。
K太郎がチョークで一本勝ち。

第3試合・ニック・ハイン vs. 粕谷優介

ライト級。
初参戦となる粕谷は、高校卒業後フルタイムで働きながらプロの試合に出場し、25歳にして自分のジムを持ち妻子を養うという、非常に堅実な格闘家人生を送っている(9月中はUFC出場のため仕事は休ませてもらっているとのこと)。グァムのPXCで戦績を重ねながらUFCに出場することを最終目標としていたが、予想以上に早く出場が決まった。家族を養うために格闘技を続けているので、UFCをリリースされたらその時点で引退するとのこと。試合結果をジャッジに委ねないことを信条としており、勝った試合は全て一本・KO勝ち。
相手のハインはドイツのエリート柔道家。日本人の奥さんを持ち、前回の試合終了後にはマイクで流暢な日本語による日本大会出場アピールをしていた。UFCでの3戦はいずれもパンチを主体として2勝1敗。KO勝利した初戦はともかく、その後の2戦はアウトボクシングで1勝1敗。内容はあまりエキサイティングではなかった。
ハインはMMAファイターとしての完成度は高くないように見える。パンチに傾倒しているのもMMAの寝技には対応しきれていないからという可能性がある。テイクダウンさえ奪えれば勝機があるが、フィジカルでは本来フェザーが適正の粕谷が不利か。打撃で優勢を保ち、むしろ相手が組みに来る展開にしたいところ。粕谷から組みに行くようだとテイクダウンに苦労し体力を消耗して苦戦しそう。

第2試合・小谷直之 vs. ケイジャン・ジョンソン

ライト級。
UFC0 勝4敗の小谷。ここで敗れれば、歴代3位タイの5連敗(1位は6連敗のフィル・バローニエルビス・シノシック)と なる。なお、5連敗以上でUFCで1勝もしたことがないのは、現在はジョン・アレッシオのみ。昨年の2試合はいずれも中堅レベルとの対戦で完敗。正直、3 回目のチャンスが与えられずにリリースされてもおかしくなかった。今度のケイジャンは前座で1勝1敗の相手だけに、これ以下はもうない。
ジョンソンはUFC1勝1敗。TUF Nationsでは準決勝敗退。柔術茶帯で、UFCでの2戦を見る限りはグラップラー寄りの選手。それでも打撃ではジョンソンが優勢になるかもしれない。小谷は組み技勝負で上回れるかどうか。

第1試合・安西信昌 vs. ロジャー・ザパタ

ウェルター級。
安西の1年1か月ぶりとなるUFC2戦目。初戦は直前の代役出場決定・初のウェルターと力を発揮できる状況ではなく、玉砕覚悟の打撃戦を挑み、結果玉砕した。
UFC デビュー戦のザパタはTUF19出身。TUFではミドル級トーナメントで準決勝まで勝ち上がったが、準優勝のディエゴ・リマに1R一本負けで敗れている。 なお、リマは連敗してUFCからはすでにリリース済み。公式戦の戦績はわずか5戦で4勝1敗。今回がウェルター級初戦となる。
正直UFCとしては最下層レベルとなるザパタ。ホームということもあり、オッズでは微差ながら安西が優勢となっている。安西には初戦の博打のような戦いではなく、UFCでのこれからの力が測れるような戦い方をしてほしい。