格闘技徒然草

MMAを中心とした格闘技情報&観戦ブログ

★RIZIN雑感

つらつらと。

MVP・ミルコ・クロコップ

2連続メインでKO勝ちして大会を締めたミルコが断然MVP。
準決勝では膝をもらっただけでKOされるバルト戦で、明らかに組み合わせで優遇され、決勝でもその影響はなかったとは言えないものの、固い試合が続きがちだったトーナメントでは2回戦以降ミルコだけがフィニッシュしての勝利。
また、2回戦では急遽ヴァンダレイ・シウバの代役となったキング・モーとの試合を受け入れ、KO勝ち。モーと言えば、去年のトーナメントで優勝しながら、Bellatorではフィル・デイヴィスに敗れてRIZINの権威までも失落させていた。その負の遺産モーを、モーが12日のインターバルしかなかったとか、実質階級下だとか、試合中もモーがミルコにパウンドを入れているのにブレイクがかかったりとか色々あったにせよ、きっちり仕留めてみせた。
42歳でお茶の間的には「あの人は今」扱いのミルコがいまだにトップというのはどう受け止められるか不安も残るが、代わりのスターも用意できていない以上、今回はこれがベストか。去年「最強ヒョードル復活!」と煽っていたことを覚えているのはコアなファンだけだろうし。

フライ級

今年はフライ級のトーナメントをやるとアナウンスされたが、問題はリミットをいくつに設定するか。
フライ級といいつつ、125ポンド、58kg、60㎏と契約体重はまちまち。北米基準の125ポンドが一番妥当なはずだが、元谷と紀左衛門はそこまで落とすのが難しい。元谷はDJ戦の後、無理に体重を落とすよりバンタムの方が実力を出せると言っていたが、ナシメント戦の後には「オファーがあった体重で試合できるようにする」と考えが変わっていた。実力を出し切れるかよりも、大舞台に出る方が優先されるか。
現実的に、125ポンドにした場合は、トーナメントには所・和田しか出場できない。紀左衛門が「58kg級」などという、どこにも存在していない階級を勝手に作ってアピールしていたが、PRIDE時代の73kgみたいな中途半端な階級はやめてほしい。

女子軽量級

女子でもトーナメントをやりたいということだったが、こちらも今年組まれた試合では48kg、49kg、52kg、53kgとまちまち。49kgで戦っているRENAは52kgで戦っている村田とは「違う階級の選手」だと思っているとゴン格のインタビューでは語っている。なお、保持しているシュートボクシング女子フライ級のリミットは51kg。また、山本美憂や浅倉は本来アトム級(47.6kg)の選手。
女子の階級も、結局はRENA基準で決められるか。その場合、52kgでも減量が厳しい村田はトーナメントには出場できないことになる(125ポンドより落としたことがない中井りんは最初から除外)。

ギャビ級

設立当初から相手探しに苦労している女子無差別級だが、ギャビが堀田に圧勝した後に、負傷欠場した神取に続いて女子プロレスラーアルファ・フィーメルが対戦アピールしたことで乱闘コントに発展。フィーメルも勝手に出てきたわけじゃなくて、主催者の了承を得て(あるいは主催者からアピールしろと言われて)出てきたもの。最初から堀田の負けを計算に入れてのことだろうが、まあ誰が考えても負ける以外の選択肢はないだろうからそれはいい。しかし、堀田が負けた後は当然今回対戦する予定だった神取が対戦を煽るという流れになっていたはずなのに、それを無視してねじ込んだのでは、それは神取も怒るだろう。乱闘は必然だと思ったが、それを地上波ではカットするのか。
とりあえず、次回はギャビ vs. 神取と、場合によってはフィーメル vs. 堀田なんかを組んでストーリーをつなげられそうなギャビ級だが、どうつなげても、最後は「ギャビの圧勝」で終わる未来しか見えないのでは、どれだけ駒を用意しても今のフリークショー以上の評価は得られそうにない。

クロン vs. 川尻

この試合の結果が一番のサプライズ。川尻の勝ちは動かないと思っていたので。たしかに川尻の動きは良くないようにも見えたが、スタンドでクロンに入れていたボディブローは明らかに効いていたし、勝てない相手ではなかった。ボディを効かされたクロンは正直すぎる引き込みで回避。そこから川尻のパウンドはもらっていなかったが、川尻も付き合わずに立つという選択をすることができなかった。立っても不用意なフットスタンプからバックを取られてピンチに陥る。川尻としては新しい自分を見せたいという思いがあったとのことだが、結果的に敗着打となった。
クロンの戦い方自体は1990年代後半の柔術家のものと基本的に変わりはない(レベルは違うが)。打撃で打ち負けると引き込む。しかしそこに相手が付き合ってもらえないと、打撃で劣勢→引き込み→ブレイクのループで、最終的には判定負けするため、柔術家でもやらなくなった。今回は川尻がフットスタンプで勝負をかけて自滅してくれたから良かったものの、川尻がスタンド勝負で勝ちに徹したらどうなっていたのかという疑問は残った。
とはいえ、打撃でもかなり渡りあっていたし、グラウンドでは下になっても優勢だったのは事実。次はサワーに勝った宮田との対戦が見たい。

日本のトップファイターの今後

北岡は生涯ベストバウトというくらいの激闘で逆転勝ち。この試合がちゃんと地上波で放送されて、こういう試合もあるということがアピールできて良かった。
川尻は今までにないくらいプッシュされた状態での試合だったが、結果的に引き立て役になってしまった。本人は本意ではないだろうが、ある意味裏MVP。矢地が70kgでの川尻戦をアピールしていたが、矢地戦がお茶の間からどれくらい需要があるかわからないものの、確かに川尻の試合としてはフェザーではクロンくらいしかおらず、ライト級の方が層が厚く見たいカードが多い。
中井はあれだけタックルを切るとは思わなかった。スパーリングパートナー探しにも苦労するだけに、てっきり村田レベルのタックルを仕掛けてくる相手との練習もできずにテイクダウンされるものと思っていた。が、せっかく名前を売ったのに、階級がないので次の試合が組まれるか微妙なのがもったいない。 vs. ギャビはありえないとして、神取や堀田なら体重では不利でもその分年齢でハンデがあるので釣り合いは取れているのでは。まあ相手にはメリットがないが。
宮田は2年続けて便利屋扱いされたのだし、ご褒美として本人希望のクロン戦を組んでほしい。
アーセンに勝った所はKID戦をアピール。どっちが勝ってもわりとどうでもいいが(コンディション的に所が勝つと思う)知名度のある日本人対決として需要はありそう。ただ、UFC日本大会があるならKIDのリリースはないだろう。

ビギナー選手の今後

RIZIN名物のキャリアが浅い(目安はおおむね5戦以内)選手は明暗。
榊原委員長からはMVPと言われたRENAだが、相手はプロ経験1戦のみ。そろそろビギナー同士の試合は卒業では。実況では高田が「RENAはもう追われる立場になった」と言っていて、RIZINワールドではそうなのだろうが、現実的にはキャリア5〜10戦くらいの日本人とやったらどうなるか気になる。そういう選手はRIZINワールドには入って来られないかもしれないが。とりあえず次はアンディ・ウィンアリーシャ・ガルシアとの試合をお願いしたい。
山本母子はともに下からの極めに散る。テイクダウンしか武器がないのに、倒しても下からの極めがある相手にはパウンドで攻められず、レスラーにとっては相性が悪い。当面は同じくらいのキャリアや年齢のキックボクサー(または同じレスラー)との試合の方がいいだろう。もっとも、山本母にはそこまでじっくり経験を積むような時間は残されていないが。
那須川は同じビギナー対決で連勝。キックでの才能については疑う余地がないし、腕を極められかけても耐えきるファイティングスピリットがある一方、あそこから抜け出せたのは相手もビギナーだったからで、ちゃんとした相手なら折られていたかもしれない。将来的にMMAに本格参戦するにしても、しばらくは本業のキックで戦うのがいいのでは。今さらアマMMAや中小興業にも出られないだろうし、ビギナー同士の試合で経験を積むのはいいと思うが、しっかり準備したサワーでさえ階級下の宮田に完敗するわけだし、MMAファイターとしての実力を測定するのは遠い先の話でいいだろう。
そのサワーはまだデビュー1年とはいえ、MMA進出の準備はもっと前からやっていたので、もうちょっとできると思った。ここは勝った宮田をほめるべきか。
ビギナーでも勝つと思っていた村田は中井りんに完敗。負けるとしたら山本母子のように下からの極めくらいだと思っていたので、得意のタックルが通じなかったというのはより深刻。初めての苦戦で何をやっていいかわからず、キャリア不足を露呈した。本当にパンクラス等に出て経験を積んだ方がいいかもしれない。