格闘技徒然草

MMAを中心とした格闘技情報&観戦ブログ

★真剣勝負の悲しき神が降臨・やはりK−1には魔物が棲んでいた

原点回帰とまでいかなくても、色物味を大幅に減量した今回のK-1GP開幕戦。しかし、残酷な運命が待ち受けていた。
GGvsモー
GGは勝つ時は非常に勢いがあるが、負ける時は弱々しい選手。今日は弱々しいモードに。それだけモーの猛攻が光った。一方的に3ダウンを奪い完勝。キャリアから言えばまだまだ伸びる選手。今後のK-1を支える存在になるか。
ゲーンノラシンvsイグナショフ
去年は優勝候補筆頭と目されながら、決勝トーナメントの初戦で煮え切らぬ負けを喫したイグナショフ。今年こその期待がかかる。相手のゲーンノラシンは無理矢理増量して77kg。K-1戦士の中でも巨漢のイグナショフとは大人と子供のような対格差。これはイグナショフの豪快なKOが見られるのでは・・・と思ったのだが、腹がボテッとして明らかにオーバーウェート気味のイグナショフは手数が出ない。逆にゲーンノラシンはフットワークを使い、ヒット&アウェイで盛んに攻め立てる。ついにはイグナショフに消極イエローまで出る。煮え切らないイグナショフに、判官贔屓も手伝って会場はゲーンノラシン応援ムードに。ダメージはないものの、ゲーンノラシン優勢のまま3R終了。判定はゲーンノラシンに1ポイント入ったがドロー。妥当なジャッジだと思う。延長Rに入り、イグナショフは攻めていくが動きが遅くクリーンヒットがない。途中膝蹴りがゲーンノラシンの金的に入り、またイエローをもらってしまう。そのままラウンド終了。判定は2−1でゲーンノラシン。ここでイグナショフにポイントが入ったのは理解できないが、ともかくまさかの番狂わせが起きてしまった。
ゲーンノラシンの勇気は讃えたいが、それ以上にイグナショフが駄目すぎだった。期待していただけにがっかり。ゲーンノラシン、さすがに決勝トーナメントを勝ち抜くのは難しいだろう。
アーツvsマクド
1Rにアーツが膝でダウンを奪い、その後マクドが逆襲に転じるも、ポイントを挽回するまでには至らず判定負け。いい時のK-1らしい緊張感がある攻防だったが、KOできなかったところにアーツの衰えが感じられて少し寂しくなる。
ホーストvsフェイトーザ
ホーストがショートレンジからの素早いコンビネーションを何発もたたき込んで判定勝ち。しかし、ダウンも奪えなかったのは、グラウベが強くなったのか、ホーストが衰えたのか。両方だろう。
セフォーvs天田
いつもよりパフォーマンス50%増量のセフォー。やりすぎでちょっと鼻についた。そんな余裕があるならきっちりKOしてもらいたかった。パフォーマンスの多さとは裏腹に、けっこう天田が健闘していたのだろう。しかしこれも天田の成長なのかセフォーの衰えなのか微妙。
ボンヤスキーvs曙
突進する曙をコーナーでスルリと体を入れ替えるボンヤスキー。基本的にはかわしつつも、明らかにKO狙いの攻め。勝つだけなら逃げていればいいのだが、リスクを犯してまで打ち合ってきた。あるいは打ち合うことにリスクなどないと見なしたのか。さすがに耐久力があった曙だが、ローで確実にダメージを与えると、最後は鮮やかなハイキックが曙の左側頭部をとらえてKO。お見事。これで曙も成仏できることだろう。
武蔵vsアビティ
いつになく気迫を全面に出していく武蔵。アビディもお得意の喧嘩ファイトを繰り出し、序盤優位に立つが、だんだん地力の差が出てきた。最初はアビディコールが多かった会場も、武蔵コールへ。武蔵は強くなった。文句なしの判定勝ち。が、判定の内容に関しては文句をつける気はないが、試合内容にはちょっと苦言を呈したい。どうせならもっと圧倒して、できればKOを奪って欲しかった。単なる日本人選手枠ならともかく、去年のファイナリストならそれくらいはやって欲しい。
バンナvsボタ
キック・パンチを織り交ぜて攻めるバンナ。ボタはローのカットもしっかりしており、1年でK-1に対応してきた。バンナがペースを握るものの、あと一歩攻め込めない。そして2R。ボタのロングフックで効かされてしまうバンナ。あわててクリンチでごまかしたものの、ダメージは明らかで、ついに座り込んでしまいダウン。バンナ初戦敗退のピンチに場内から悲鳴に似た歓声が起こる。なんとかポイントを取り返そうとするバンナだが、ダメージも残っていて切れがなく、ボタはクリーンヒットを許さない。攻め込みつつも決定的なダメージは与えられないまま3R終了。判定は29−28ボタ、29−29ドロー、28−28ドローで1−0のドロー。許容範囲内のジャッジだと思う。そして延長へ。ここはバンナが有利と思われたが・・・なんと、バンナ陣営からタオルが投入され、ボタまさかのK-1初勝利!どうやらバンナは長期欠場の原因となった左腕をまた痛めてしまったらしい。悲しい・・・。
もともとパンチ主体のバンナにはボタは相性が良く、さらに最近ボタの試合内容がどんどん良くなってきていることもあって、面白いカードだとは思っていた。しかし、バンナが負けるとまでは思っていなかった。ボタはK-1参戦後5連敗の苦しみを乗り越えて、ようやく元ボクシング世界王者の実力を見せることができたが、よりによってこんなところで見せなくても・・・。バンナの左腕負傷がひどいものなら、また長期の欠場になるだろうし、そうでなくても決勝大会(リザーバーやスーパーファイトとして)には間に合いそうにない。真剣勝負だから仕方ないが、去年に引き続き寂しい決勝トーナメントになりそうだ。
全体的に、レベル的には低くはなく、緊張感もあったが、満足にはほど遠かった。期待していた有力選手の相次ぐ敗退も原因だが、KO決着が少なかったことも大きい。バンナだけでなく、アーツ、ホーストセフォーを見ても、長年K-1を支えてきた選手に衰えが見受けられるようになってきた。ハードな戦いによるダメージの蓄積もあるし、年齢的なものもあるだろう。勝っても豪快なKOは見られなくなった。K-1が再生するためには、モーのような若い新戦力の発掘が必要だ。「純K-1路線」に戻しても、新たな力が台頭してくるまでK-1はしばらく苦しい時代が続くかもしれない。